映画『Jason’s Lyric』のサントラに収録されたBMU名義のナンバー「U Will Know」を手掛けたディアンジェロが1995年に発表したデビュー・アルバム。
ディアンジェロは明らかに70年代初頭のプログレッシブソウルに刺激を受けているが、自分と同世代のヒップホップを慎重に取り入れてもいる。多くの同世代人と同じく、マリファナ(アルバムタイトルの「ブラウンシュガー」はマリファナの意。実際はヘロインを指す)礼賛の曲をレコーディングしているが、これは他に比べてはるかに気のきいたものになっている。昔ながらのラブソングの体裁(「ブラウンシュガーベイビー、君の愛でぼくはハイになる……ぼくの眼がワインレッドに染まっているのはそういうわけさ(Brown sugar babe, I gets high off your love … that’s why my eyes are a shade blood burgundy)」)をとりつつ、ドクドクと脈打つようなベースラインとオルガンの重厚な残響で中毒状態を表現している。また別の曲は、タイトルがあまりにも俗悪でそのまま活字にできない。不貞と殺人をあからさまに歌っているが、ラップで語られる大半のファンタジーとは対照的に、ディアンジェロのブルース調の語り口はそういう行動が深刻な結果をもたらすことをはっきりと言っている。アルバム中の白眉はプリンス風の「Higher」で、神への精神的な愛と女性への現世的な愛を、オルガンで盛り上げ、目がくらむような賛美歌にまとめ上げている。